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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪


「…………!」


「……あなたも同じなの?」


 やはり外套の下は薄手の肌着の一枚のみ。貴族の女性にとっては裸も同然の格好なのだ。

 咄嗟に目をそらそうかと考えたシアンは、だがしかし、驚いたせいで身体が動かない。

 ハナムが彼に近寄った。

 声を潜めてシアンが問う。

「……どういう意図でしょうか、これは」

「警戒しないで……誰も見ていませんわ。貴方は何も不安に思わないで」

「……っ」

 ハナムがシアンに抱きつき、抵抗しない彼に身体を押し付ける。

 そのまま体重を預けて被さったから、シアンはゆっくりと背後に腰を付いた。

ドサッ...

 自身の上にまたがるハナムを、起こした胸で受け止める。

 二人の目高が同じになり至近距離で見つめ合った。


「わたしを抱いて、シアン」


「貴方が僕を誘惑するとは信じられませんね」


「誘惑?──そんな甘いものではないですのよ」


「……」


「わかるでしょう?このままだと王家の血が途絶える…──。だから、貴方が、わたしに世継ぎを授けなさい……!」


「……王妃様」


「これは命令よ」


 確かにハナム王妃の目付きは、誘惑者と呼ぶにはいささか険しく、その瞳も怯えていた。

 色めいた閨言(ねやごと)はこの空間に不要。

 あるのは陰謀と策略──。世継ぎを手にし権力を得ようとするサルジェ家の欲望。

 ただ、ハナムの狙いを理解したシアンはかえって心が静まったらしく、余裕をふくめた笑みを頬に浮かべたのだった。



 なんだ結局


 こうも早く尻尾をだすのか。


 ねぇ、サルジェ公爵


 実の娘に、娼婦同然のマネをさせて。


 ……でも貴方は知らないようだ。


 僕はとっくの昔から


 世継ぎを望めぬ… " 男 " として不完全な身体であったということを。


 残念です。


 僕がまだ 王族 であると信じている愚か者なんて、貴方くらいのものでしょうね──



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