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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪

「ふっ……、それで?貴女自身は本当にコレを望んでいるのですか?」

「……そうですわ」

「そんな事がありえましょうか。…ご自分で気付いておられないのですか?僕に触れる貴女の身体は、いつも嫌悪で震えているのに」

「…こ、れは…!」

 指摘されたハナム王妃は、シアンの胸ぐらをぐっと掴んだ。

「…っ…そんな意地の悪いことを言わないで。房事を前にして…緊張で震えない女はいなくてよ?」

「ええ…よく知っています。男娼である僕の 客 は男が多いが女性もいました。愛と快楽にすがりつく彼女らを…僕は丁寧にもてなしてきた」

「ん…っ」

「貴女をドロドロに甘やかすコトだって、簡単にできます」

 彼の指が、ハナムの顎先をそっと摘む。


 唇が重なる──


 ハナム王妃はその直前、両の目を固く閉じた。


「……ッッ」


「──…」


「……………?」


「ですが…───。これ以上、気分屋の貴女に振り回されるのはこりごりなのです、王妃様」


「な、んですって……!?」


 けれど彼女の唇には何も触れてこず、再び目を開けたそこには、つとめて冷静な顔のシアンがいた。

「わたしが……気分屋……!?」

 無礼な物言いをされたわけだが、彼の表情に静かな圧力があるせいでハナム王妃は言葉につまる。

「…っ…わ、わたしはいつもあなたの味方だった!それを振り回しているだなんてっ…どういうつもりで…」

「貴女が僕の味方?…ふっ、まさか」

「追放されたあなたを王宮に呼び戻した、その恩を忘れたの??」

「その通り、タラン侍従長を排除するために貴女は僕を利用したのです。同じく九年前──…邪魔な王弟を始末するため、タラン侍従長を利用しておきながら」

「──ッ」

「…いい加減目を覚ましてはどうですか。貴女がいったいどんな小細工を労したところで本当にほしいものは手に入らないというのに」

 ハナムの顎を掴む指がそのままだから、彼女は顔をそらせなかった。

 
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