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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪
「あの書状が今も残っている筈がないのですよ。何故なら読まれてすぐに燃やされたからです」
「………え?」
「王弟は不審なソレが悪用されぬようすぐに処分しました。そして陛下の身を心配して、その夜 寝所に行ったのですから」
ハナム王妃が犯した間違いは単純だった。
彼女が、タランの策略の証拠としてシアンに渡した書状は、あの夜すでに燃やされていたのだ。
だからその模造品を正確に用意した者がいるとすれば…
それは書いた本人しか当てはまらない。
「つまりは貴女です、王妃様」
味方であるなど、愚の骨頂。
そんな者はひとりとしていなかった。
「──…どうぞお帰りください。今夜の貴女のたくらみは陛下にふせておきますから」
「……!!」
言葉も出ないといった様子でフルフルと震えている女を、シアンは自身の上から退かした。
愚かな女(ひと)だ。
…素直な人なのだ。
感情にまかせて突発的……。その行動力だけは立派だと、皮肉をまぜて賞賛してもいい。
だがこれ以上は、邪魔なのだ。
「お帰りください」
「…っ…待っ て」
「……」
「戻れませんわ。…そうよわたしは…あなたが憎いわ、大嫌いよ!でも利用しないといけないの。わたしは王妃だからっ…あなたを使ってでも果たさないといけない義務があるのよ!」
「…僕がその協力を拒んだら?」
「拒むなんて許さない。…いい?わたしが今声をあげたら困るでしょう?無理やり犯されそうになったと言って、死罪にしてやりますわ」
「そのような脅しは無意味かと」
立場を利用して脅しをかけるハナムにも、シアンは動じない。