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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第42章 空虚なる交錯



「……ッ……ん」


ゴクッ...


ゴク....ゴキュ....


 含んだ水を少しずつ、口で移す


 それに合わせてアシュラフの喉が鳴り、冷たい水を飲み下した。


「…っ、ハァ…ハァ…」

「……、もう、一度だ」

「…か…かしこまりまし た」

「水はもういい…!」

 水を飲ませたシアンが顔をあげようとすると、男の手がうなじをグイと押さえて引き戻した。

「ん……!」

 水滴をまとった二人の唇はすぐに合わさり、舌が絡まった。


 ああ……やはりだ


 声も視線も固く冷たいのに、舌の弾力はこんなにも柔らかく、包みこもうとしてくる。

「ハァッ…‥何故 ですか‥…陛下‥…」

「…っ…!!」

 甘い声色で抗議するシアン。

 アシュラフはより深く彼の唇を奪った。

 シアンが身体を支えるために手を突き出し、男の胸板を強く押しても構いやしない。

 逆にその手を掴み返して、寝台の上に彼を引き入れる。

 腕を引かれて倒れ込んだシアンは敷布の上で転がり、アシュラフと体勢が逆転した。


ドサッ...!


「…ッ‥‥ハァ‥…ハァ‥‥ハァ」


 仰向けとなったシアンは、すっかり上気した顔を隠そうと首を横に向ける。


 ハナム王妃と相対していた時の冷静さはとっくに剥ぎ取られた様子だ。今はただただ弱く、色めかしい。


 そんな彼を腕の中で見下ろすアシュラフは、苦しそうに眉間にシワを寄せて低く息を吐き出す。


「はぁ……!!」


 ぼんやりとした瞳はまだ…夢と現(うつつ)を交錯しているのかもしれない。




「………俺を」



「ハァ‥…っ…‥ァ」



「俺を……《 兄 》と、呼んでみるか…!?」



「‥‥‥‥‥!?」



 シアンもまた、その言葉を……

 幻聴であると疑った。




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