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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第42章 空虚なる交錯

「‥‥、いま、なん と‥‥!?」

「…呼べ」

 同じ言葉を繰り返される。
 
 シアンの頬が恐怖でヒクリと動いた。

 意識をするより先に動いた身体は、すぐにでもここから逃げ出そうとしている。

 それを阻むかのように、顔の両側にアシュラフが肘をつく。

「…っ」

 シアンの身体は震えていた。

 怯えているようで歓喜しているかのような。二つの感情をいっては戻りを繰り返しているかのような…。

 そんな彼を腕の中で見下ろすアシュラフは、喉の奥で込み上げた笑いをくい殺した。

「馬鹿が……ほんの戯言だ、本気にするな。
 構わんだろう?
 お前はどこか、アレの面影がある……」
 
「ぁ…‥っ」

 頭を下げ──シアンの首筋に唇を落とす。

「言え」

「その様なこと…っ…言えるはずありません……!!」

「そうか?」

 耳の真横で囁くように言われ、腹の底が疼く。シアンは首をひねり拒んでみせるが、反対側の首筋を狙われるだけだ。

 同時に腰布はぬきとられ、緩んだ衣服の隙間に手が滑り込む。

 男の指が素肌を滑った感触に…小さく声が漏れた拍子を狙って、また唇を塞がれた。

「ぁ‥ッッ……んん‥…//」

 舌の根ごと吸われるような深い口付けが続き、呼吸が苦しくなる。

 感じる上顎や、口腔の粘膜をざらりと舐められると、甘い声が鼻にぬけてしまう。

 思わず相手を押し返そうとしている右手は…

 ──嫌がっている?

 そうではない。

 いま起こっているこの信じ難い事態に対して、なんとか正体(せいたい)しようとする必死な衝動……それ故だ。

「‥陛…‥か‥‥ァッ‥//」

「強情な奴だな…………ハァ、舌を出せ」

「‥は……ぁ‥」

 たとえ王命であろうとも " 兄 " だなどと呼べるわけがない。許されないと、わかっている。

 だが舌を出せと言うアシュラフの指示には素直に応じて、シアンは震える舌先を懸命に突き出した。

 すぐにアシュラフの舌が絡まり、淫らに水音をたてる。

 それを耳にしながらぼおっと痺れて遠のく理性が、シアンの身体をより従順にさせていた。


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