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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第43章 誓い

 すでに自身は身体を洗ったのだろう。王宮で使われる石鹸がシアンの髪から香る。

 それに誘われて手を伸ばしたアシュラフは、サラりと柔らかな彼の髪を撫で、それから頬に触れた。

「……っ」

 普段と同じ冷静さで王の身支度を整えていたシアンが、ピクリと反応して手を止めた。

「陛下……」

「顔を見せろ」

 そっと顎に指をかけると、シアンが面をあげる。

 横から陽の日を浴び、白く反射する睫毛の奥で此方を見上げる瞳。

 言葉を言いかけて開いた唇は…ぽってりと紅く腫れていて、透き通る白肌は、砂金が混ぜられているかのような艶やかさを纏っていた。

 そこには今日だけの特別な色香があり、あの蜜夜が幻想ではなかったのだと、やっとアシュラフは確信できた。


「……あの、陛下」


「なんだ」


「昨夜の、私が犯した無礼については…」


「気に留めるな」


「……」


 言いにくそうに切り出したシアンの問いに、即答する。

 それを受けて、シアンは安堵とともに、儚げに笑う。

 僅かな寂しさも滲ませて。


「寛大なご慈悲を…感謝致します。昨夜の過ちは、陛下もどうかお忘れください」


「──…忘れろとは命じていない」


「…っ」


 アシュラフがシアンの腕を掴んだ。

 そして彼を引き寄せて、腰に手を添える。

 寝台に片膝をついて乗り上げたシアンは、驚く間もなく唇を重ねられていた。

 口付けの合間に、アシュラフの片手がシアンの小さな頭を捉えた。意地の悪い指は耳に伸びて、感じやすい耳朶をくすぐる。

 はぁ…と色めく吐息を零した口に、角度を変えて丁寧に蓋をする。

 口内をひと通り堪能した後、舌先でシアンの下唇を舐めて、離れた。


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