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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第43章 誓い
──
「急ぎ伝令を出せ!!巡察隊を王都に呼び戻すんだ!!」
帝国の侵攻を知り大混乱の王都では、騎兵師団将官のバヤジットが隊の指揮にあたっていた。
「城門はどうした!?南門だけ残し閉鎖しろ!」
「それについてはっ…いま大神殿で協議が始まったところで、許可なく城門を閉じるのは……っ」
「あの者達の決定を待っては日が暮れる!砂煙を見ただろう?夕刻には敵兵が街を包囲するぞ」
砂漠に立ち上がる砂煙は、敵兵の位置とともに、その兵力差もバヤジットに教えてきた。
おそらく帝国兵の数は二万弱。
対してキサラジャは、民兵をいれても六千五百……。
まともにやっても勝てない。籠城戦(ろうじょうせん)にもちこみ、そのあいだに隣国と交渉するしかないのだ。
「城壁の外にいる民達は中へ避難させているな?」
「はい!ですが困った事に、平民らがクオーレ地区の中まで入ろうと門に群がっております!」
「…っ…なんだと?」
「このままでは暴徒化も……」
「狼狽えるな…!」
建国以来の数百年、大きな争いが起こらなかったキサラジャは、侵略に対する危機意識が欠けていた。
数だけ大勢いる侍従たちは大神殿にこもり、時間がないというのに、形ばかりの議会を開いている。
怯えた民は少しでも安全な場所を目指し、城壁の内へ内へと押しかける始末。
“ 隊の士気も低い、このままでは……!! ”
「俺はいったんここを離れる!お前はカナーヤ将官を探し、弓兵師団の城壁配置を進めろ!」
ラチがあかないと判断したバヤジットは、その場の指揮を副官に任せて王宮へ戻った。