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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第43章 誓い

「へ、陛下……!?」

「すでに息を引き取られています」

「──ッ」

 反射的に走り寄ろうとしたバヤジットだが、もう手遅れであると一目瞭然だった。

 それは床に広がる毒々しい血の量がものがたっている。

「何 だ……何が起こっている……?陛下を手にかけたのか?……な、ぜ」

「こうするしかなかったのです」

「何故だ…!」

「キサラジャは必ず帝国に敗れます。籠城戦になったとして……あんな古い城壁、帝国の新兵器でいとも簡単に穴があく。三日と待たず、首都ジエルは攻め滅ぼされるでしょう」

 王の亡骸を抱くシアンは、狼狽するバヤジットを見ようともせず、淡々と語る。

「敗戦国のたどる末路は悲惨です。兵士は皆殺され、民は人権を失い、帝国の奴隷となります。……………ならば」

 バヤジットに語りかけているのか
 自分自身に言い聞かせているのか…

「……ならば我らにできる事は、現国王を内部から討ち倒し、敵国の攻め入る理由を奪うだけです」

 独り言にも思える抑揚の失われた声で、シアンは話し続けるのだった。



 バヤジットには当然、受け入れ難い話である。



「だから陛下の命を犠牲にしたのか……!自らが助かる為に、一国の王を、おめおめと敵国に差し出すのか」

「……ええ」

「命にかえても君主を御守りするのが、俺たちの使命だろう……!それをっ……お前は」

「どうせ負けるのだから、そんな抵抗は無駄ごとです」

「シアン!!」



 バヤジットは怒鳴り、逆上してシアンに掴みかかった。

 アシュラフの遺体からシアンを引き剥がして、彼の両肩を掴み振り乱し、責め立てる。



「自分が犯した罪をわかっているのか!?

 お前は国を裏切ったのだ!歴史あるキサラジャの国をっ……その玉座にあられる御方をっ……お前が……!」


「……」


「許されない……!」


「……」


「これは許されない悪行だ!シアン!
 こんな事は決して…───ッッ」


「──それなら!!」




....





「それなら僕を殺せばよかっただろう!?」







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