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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第45章 Epilogue──春待つ砂丘の花々よ
「……そんで、いつも " ここ " には、オメルの友人がいたのです。シアンという、強く、かしこく、美しく、優しさにあふれた御方が……!」
「……!!」
「あいつが手筒を書けるようになったのも、その方のおかげなんです。あいつにとって、シアン様がたったひとりの友人で──…っ」
気がたかぶった様子の男がバヤジットの腕を掴んで訴えるが
そのうち我に返って、再び頭を低くした。
バヤジットも悔しそうに目を伏せる。
「…ナハル。残念だが貴方の息子は、…もう」
「…え、ええ、ええ、わかっております。便りはぱったり無くなりました。…わかっております。あいつは、もう、死んだのでしょう?わかっております…」
「すまなかった。俺はオメルを守れなかった…っ」
「……めっそうもございません。オメルはあなた様に感謝しております」
手筒のいくつかが、男の手からこぼれて
地面の上にふわりと落ちる。
バヤジットは相手を怯えさせないよう、優しく問いかけた。
「貴方が俺を探したのは…オメルの安否を聞くためか?」
「……いいえ、違います。バヤジット様」
手に残った紙きれの内のひとつを、男がバヤジットに差し出す。
「──…オメルが、最後によこした物です」
「……」
「これがっ……バカ息子の……さいごの、言葉」
.....
「それを見せてくれないか」
すると、隊列をひとりはずれた青年が、ラクダの背から男の隣に降り立った。