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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第45章 Epilogue──春待つ砂丘の花々よ
「シアン様はどこにいるのでしょうか」
男は、腰布の隙間に大事にしまっていた物を、新たに二人に差し出した。
「花は咲きました!故郷の……庭にっ……たくさん咲いているのです!持ってきたぶんは枯れちまいましたが、戻れば、まだっ…」
パッとひらいた掌で、舞い散る花びら──。
「シアン様にお会いしとうございます。息子の、オメルの夢だった花の中に……シアン様をお連れしとうございます」
「……」
「お連れしとう…ございます……!」
肩を震わして話す男は、すっかりしぼんだ花の残骸を、また同じように腰布に戻す。
そこから逃れたいくつかが……宙に浮いてバヤジットの鼻先をかすめた。
思わず追った先の視界で、青く突き抜ける空を背負い
花びらの純白が、まばゆく光を身に纏う。
不自然にきらめいて…ぼやけた時
バヤジットは、自分の視界が涙で潤んでいたと気が付いた。
「……っ」
大粒の涙は彼の目尻に溜まったまま、頬を流れず堪えていた。
…瞳の奥が焼けるように熱い。
なのに宙をひらめいた花弁は、自由で楽しげで
ゆっくりと旋回したかと思えばひらひらと降りてくる。
それはバヤジットに見つめられながら、前に立つ青年の肩に落ちた。