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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第6章 片腕の兵士
「お返しします」
「…ッ…貴様ぁ!」
当然、怒った男は差し出された刀を無視し、手に持つ槍をシアンに向けて振り下ろした。
声も無く倒れ地に腰を付いたシアンの腹に男の足が乗り、めり込む。
「生意気な下民め……」
「………ッ─…!!」
ググッ....
「教育の必要があるようだな…っ」
「…‥ァ─ッ‥‥グ‥…‥!!」
「だがここで手を下しては後処理が面倒だ…。貴様を連れてきた公爵家への建前もある」
「‥‥‥ッ」
「かと言って許されると思うなよ?無礼を働いた礼として、きっちり歓迎の舞台を整えてやる。
──…ウルヒ!ウルヒはいるか!?」
「‥‥!?」
そこで副官に名を呼ばれ、ひとりの男が隊列をぬけて現れた。
「何でしょうかねー副官殿」
「貴様の好みであろう。歓迎してやれ」
「それはそれは…俺がもらっていーんですか?」
二人のいる最後尾までのそのそと歩いてきた男は、浅黒く大柄な身体に汚れた隊服をまとった、見るからに危険な様相である。
頭布留めの色から察するに、最下位の隊員だ。
乱れたターバンからは整えられていない長めの髪がいくつも飛び出し太い首に張り付いている。ぎらついた目をシアンに向けるさまは、肉を前にした野生の獣と瓜二つだった。
“ ウルヒか…っ…あのクルバンさっそく災難だな ”
“ ちっ、いきなり死ぬんじゃないだろうな? ”
立ち代るように他の近衛兵が散っていく。ウルヒを良く思っていないのが筒抜けの顔で、しかし上官の指示なので黙って引き下がる。
「さっさと立ちなぁー、キレイな顔の小僧」
「……っ」
「副官さまのご指名だ。俺がお前の入隊試験を手伝ってやるよ」
「……試験?」
「なに簡単なルールだ……俺と闘えばそれでいい」
ウルヒが槍をひと振すると、砂が舞ってシアンの顔にかかった。