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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第6章 片腕の兵士


「……な、なんだ?」

「僕は次の一手で貴方を倒します」

「はぁ?」

「……次、貴方の初手をかわした その後 で、僕が貴方を切り殺す」

「て、てめぇ…!」

「覚悟して下さい」

「……!!」


“ はったりだ……そうに決まってる……!! ”


 ウルヒは内心、狼狽えた。

 突然の勝利宣言。もちろん根拠の無いでまかせの可能性が高い。

“ だがコイツの逃げ足は本物だぁ…っ ”

“ もしもまた俺の攻撃がかわされたら…… ”

“ ……殺され る? ”

 感情の読めない細めた目で見据えられ、ウルヒの顔から笑みが消える。

 嘘だ、はったりだと自身に言い聞かせれば、ナゼか槍を持つ手が震えた。


「……っ」


 華奢な癖に、素人の癖に、味方はひとりもいない癖に

 …何故これほど落ち着いていられる?腕を切られ、血の滴るそこは痛みを伴う筈なのに。

“ 何か秘策があるのか?この状況で俺を倒す可能性があるってのか?…いいや 可能性なんかじゃねぇ…あいつは…勝ちを確信してる…!? ”

「……」

「どうしました? 刺して 来ないのですか?」

「ぐ…っ」

 ウルヒは徐々に相手の空気に呑まれていった。ウルヒの優勢になんら変わりはないのに、それにすら疑心暗鬼になるほどに。

“ 落ち着け、落ち着け…っ。こいつの言う事はデタラメだぁ。今まで避けられたのもまぐれだ!次はかわされねぇ…ぜってぇ外さねぇ ”

「……まだ、ですか」

「……く、くくく」

「──…?」

「余裕だなぁ小僧!? 少し遊んでやれば調子にのっちまって笑えるじゃねぇかぁ!」


 ウルヒは巨体をひねり、両手で掴んだ槍を大きく振りかぶった。


「刺すだけが槍だと思うなよ!!
──槍はっこうやってなぁ!」

「…」

「周りの敵をなぎ払うにも使えるんだ!」


 そして前に踏み込む。長い武器の長所を生かし、シアンが逃げられない間合いまであっという間に詰め寄った。

 狙いは──無防備にさらされたシアンの背中。そこを狙い槍をぶん回す。


“ 刺突と違ってこれなら避けられねぇ! ”




───



「──な!?」


カラン!


 シアンはその瞬間、持っていた武器を地に捨てた。

 そして身軽になった彼は迷いなく前に駆け出す。シアンがその懐に飛び込むまでホンの一瞬だった。



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