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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第7章 餌はしたたかに振る舞う
「ん~?なんだ戻ってきたのか」
宿舎の食堂には、近衛兵がまだ大勢残っていた。
「お前は今日の主役だからなぁ。もてなしてやる予定だったのに、さっさと消えちまって退屈してたところだ」
先ほどシアンに食事を許さなかったひとりが、そんな事を言っている。
「本当だぞ?いけ好かねえウルヒの奴を返り討ちにしたんだ。朝の訓練ではいい物を見せてもらったからな」
「命乞いするウルヒの顔は傑作だったな!」
酒がはいり気の大きくなった男達が豪快に笑う。酒器であるアンフォラを片手に、もう片方の手でシアンを手招く。
「なぁっ…やっぱりやっぱり危険だぞ…!? 逃げようよ」
「大丈夫」
「大丈夫かこれ…!?」
シアンの背中に隠れたオメルが衣服の裾を引っ張る。
すると二人のやり取りを聞き取れない男達が、早くも痺れを切らした。
「お前ら何を話している?ぐずぐずするな」
「ウルヒに腕を切られてただろ。手当してやるから……へへ、服脱いでこっちへ来いよ」
「…皆さんお優しい方々ですね」
裾を掴むオメルの手を振り払い、シアンは食堂に入っていく。
座る兵士の目の前まで赴くと、さっそく男の手が絡みついてくる。手首を掴む者。肩に手をまわす者。
「手当ての前にお願いがあるのですが…。僕たちに水を頂けませんか?」
「──…水?ああ、それで来たのか」
「喉が渇いて仕方がありません」
「まぁそのくらい恵んでやってもいい。干からびて死なれても面白くない」
衣を剥ぎ取ろうとする手に対して無抵抗なシアンの顎を捕まえ、ひとりの男が笑った。
「飲みたいなら飲ませてやるよ…!!」
アンフォラを傾け酒をあおる。
その酒を口に含んだまま、シアンの顔を引き寄せた。