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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第1章 王弟が散った日



 だったら早く終わらせてくれ



 少年は口を閉ざし……

 男も無言になる。 



スチャ───



 男は指の震えを抑えるように、刀の柄を強く握り、そして構えた。

 冷たい空気を纏い、鈍く光る切っ先

「──…」

 少年は……細めた目でそれを見上げた。

 少年の瞳に怯えの色はなかった。怯えているのは、刀を構えた屈強な男のほうである。

 徐々に閉じていく瞼の奥で……静かな瞳が上目遣いで男を真っ直ぐ見つめるのだ。



 その瞳は、この地には珍しい

 濁りのない翡翠(ひすい)の色──。



「……ッ……王弟…殿下……
 お許しをとは申しません……!!」

「‥‥‥」

「どうか殿下に死後の祝福があらん事を……、陽の国で神の祝福に満たされん事を……ッ」

「ああ‥‥」


 もう、いい


「もう‥‥いい‥‥
 ‥‥‥僕は、疲れたのだ」


 寒い


 翡翠の瞳が、ふっと空へと流れる。

 そうして宙を泳いだ後…何もかもを諦めた様子で、遠くの砂丘に向けられた。

 少年の視線から解放された男は、刀を持つ手を高くかかげた。


“ 殿下……!! ”


カタカタ カタカタ...

カタカタカタ....

グッ...!!


「痛みは…決して与えません……!!」

「‥‥」

「──…ッ」






 ……ねぇ


 教えてよ






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