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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第9章 蜜にたかる蛆
「あの老いぼれ、本気でタラン様に張り合うつもりでしょうか。何かにつけて文句ばかり……」
連れの男が嗤笑する。
「サルジェ家などいまや名ばかりの公爵家。すっかり落ちぶれたものですなぁ!」
「ふ…、その様な態度で良いのですか?仮にもあちらは王妃を立てた家。お世継ぎを授かれば、最も力を持つのは彼等ですよ?」
「そのお世継ぎが望めぬからよけいに滑稽なのです。何しろあの王妃……もう何年も陛下の寝床に呼ばれていないと言うではありませんか!」
「声が大きいですよ」
「いやいや、これは失礼」
調子に乗って話す男は、タランにたしなめられても悪びれない。
「しかし陛下の信頼どころか、寵愛までタラン様に奪われたとあっては、さすがに気の毒に思えますねぇ……くく」
「……ふ」
相手がサルジェ家への侮辱を止めないので、今度はその言葉を否定せず、タランは薄く含み笑った。
「では私めはここで失礼致します、タラン様」
「ええ」
そして回廊の途中で別れを告げられ
ひとりとなって初めて、その口許から笑みを消した。
「蛆虫が…──」
嘆願書を片手にまとめ、本来の目的であった部屋の前で立ち止まる。
鋼製の重たい扉が、見張り番ふたりがかりでゆっくりと開けられる。そして中に通されたタランは、冷たい石板の床に靴音を響かせた──。