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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第9章 蜜にたかる蛆
「あいつが…………戻ってくる」
「……。あいつとは…?」
「──…」
「もしや、あの反逆者の事ですか」
にこやかだったタランの表情に曇りがさした。
座椅子で水パイプを嗜む相手は、タランの変化に気付かぬのか気にしていないのか、そのまま構わず呟(つぶ)めいた。
「もうじき俺を殺しに来る。国の混乱に乗じ……俺に不満を抱く民達を率い……俺の首を取りに来る」
「…っ…ま さか、何を仰りますか陛下!」
タランは思わず片膝を立てて身を乗り出す。
書状は傍らに捨て置き、男の足元まで近付いた。
「あの者は十年近くも前に既に死んでいるのです。今更…っ…何がどう転ぼうと陛下の前に現れる訳がありません」
「……死んでいる、か。……フ」
「……!?」
「何処に……そんな証拠があるのか。たったの指の一本……それだけで、何を信じろと言うのだ」
「陛下、それは…!」
「……あいつは今も、俺を恨んでいる」
再び紫煙を吐き出した男は水パイプを手放し、床の上に転がした。
そしてこめかみに手を当てると、気分が優れない様子で頭を傾け片足を投げ出す。
天蓋の隙間からのぞいた薄い褐色の足に──タランの両手が添えられる。
「我が愛しの君主よ……。どうかその様に思い悩まれませぬよう……」
「……ッ」
足の指を唇に含んだタランが、踵(かかと)を包んだその手をふくらはぎに滑らせ、膝裏までを辿った。
逃げようとしない足に何度も口付けをほどこす。
そして、金模様のベールを捲り内側へ身を入れたタランは、悩ましく息を吐いて目を伏せた若き君主を──滑らかな絨毯の上に押し倒した。
──…