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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第11章 復讐者の記録──弐
『 ………、フゥー… 』
その後、自由になった腕で顔を隠し仰向けのまま動かない少年と──
そこから少し離れた部屋の角で、朱色の煙管(きせる)から煙を吐き出すヤンがいた。
いきなり襲ってきた時とはまたもや態度を一変させて、円卓に肘を付いたヤンは静かに少年を見守っていた。
『 僕は…もう、死んだ身だ…… 』
『 …… 』
『 このようなマネをして生きる必要は無い…… 』
ヤンは、裸体を隠さず横たわったままの少年が、涙を流して泣いているに違いないと思っていた。
しかしそうではないらしい。
少なくとも、こうして呟めく彼の声に嗚咽は含まれていなかった。せっかく沢山喘がせて悦楽を擦り込んでやったというのに……元の通り、感情を殺された声に戻ってしまっている。
うるさい──
騒ぐ客達を前にボソリと呟いた、あの時の声と同じくらい……絶望を滲ませて
『 ──…お前は、死んでない 』
『 ……!? 』
『 お前は生きている。残念なコトにな 』
沈黙の後、ヤンがそう声をかけた。
投げ出された少年の足がピクリと反応する。
『 もとのお前が何処の誰でどんな境遇だろうがそんなもの娼館(ここ)では無意味だ……忘れちまえ。お前が言うように死んでしまったと思えばいい 』
『 …… 』
『 だが " 今の " お前はここに生きている…。あの女将に拾われて俺と引き合わされたんだ。不運だったなあ 』
『 だからなんだ。死に損なった僕はっ……生きるのが、義務なのか? 』
『 いや権利だ 』
『 …ッ…? 』
相手の言葉が不可解で、少年は思わず目を開けた。