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不倫白書 Ⅰ
第1章 初めての不倫…
 5

 それは…
 映画が終わり、トイレを済ませ、ロビーに出たタイミングであった。

「ねぇお姉さん…」
 男が、いや、今、わたしを再び抱いてきている彼がそのロビーで、不意に後ろから声を掛けてきたのだ。

 わたしはナンパ等、ほぼされた事が無い…
 そして当然、ナンパ慣れもしてはいない。

 だからその声掛けが、ナンパ目的だとは最初は気付かなかった…
 いや、ナンパだとは思いもしなかったのである。
 


「え、何か?」

「あ、いや、お姉さんてさぁ、よくこの映画館に来てるよねぇ?」
 
 そんな彼の声掛けに…

 そして彼の若さと、その姿に…

 急にドキドキとしてきてしまった。


「え、あ?」
 わたしは一瞬、何の事かわからなかった。

「あ、うん、だから、よくここで見掛けるなぁってさぁ…」
 それはまた、彼もよく映画観賞に来ているという意味の言葉でもある。

「あ、う、うん、週に一、二回は…」
 と、まともに応えてしまう。

「ええ、映画好きなんだぁ?」

「あ、うん…好き…」

「ねぇお姉さん、お茶しながら今の映画の話しを゙しようよ」

「え?」

「なんかさぁ、あのラストの終わり方がイマイチ納得できないんだよねぇ」
 実は、わたしもそう思っていたのだ。

 そして…

 確かに、少し、この映画のラストシーンの話しがしたい…
 そう思ってしまった。

「あ、うん…」

 これが単純に『お茶しよう』と、いう誘いであったならば…

 さすがのわたしにもナンパ目的と直ぐに警戒できたのだが…


 実は…

 映画の話しをしたかった…

 いや、したいと秘かに以前から思う事が何度もあったから。

 だから、つい、わたしは、彼の誘いに乗ってしまったのだと思う…

 




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