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僕のとなり
第3章 バイト
「お前は誰だ、俺は客だぞ!!」
「お客だからって何をしてもいいって訳ないじゃないですか!!」
僕はその口論の隙をみて男から離れた。
店内はその様子に気づいて他の客が騒めき始める。
(何があったっていうの?あの男の人?)
(暴力団関係?)
(単なる酔っ払いかしら?)
(薫くんに絡むなんておかしな男よね…)
あちこちのテーブルからヒソヒソ話しが聞こえてくる。
これには店長の佐藤さんも出て行かない訳にはいかなかった。
店長はカウンターから出てくると、40代の客にこう言ったのだ。
「大変申し訳ありませんでした。今日の代金は頂きませんので、今日の所はお引き取り頂けないでしょうか。こちらのウェイターには後ほど私からキツク注意をしておきますので…」
40代の男の客は納得いかないような顔をして店長を見つめていたが、周りの他の客からの視線に気づくと、バツが悪そうにしながらこう言う。
「ここの店の社員の教育は全くなってないっ!!二度とくるものかっ!!」
「はい、本当に申し訳ありませんでした…」
店長の佐藤さんはまた深々と頭を下げた。
僕はその姿を見て何となく納得がいかなかった。
でも、これ以上騒ぎが大きくなると困るのだろう。
とも、思っていたのだ。
40代の客は怒ったように店を出て行った。
その後、僕は軽く後ろから肩を叩かれたので振り向いた。
すると、そこには先ほど僕を助けようとしてくれた男性が立っていた。
「大丈夫か?怪我はないか?」
とても心配そうに僕を見ている。
その男性の背は高くひょろりとしていて眼鏡を掛けている。
「はい、大丈夫です…先ほどは、ありがとうございました」
「怪我がなくて良かったよ…」
そう言うと彼は笑った。
その男性こそが森山優真だったのだ。