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僕のとなり
第3章 バイト
そうこうしているうちに、お客はどんどん帰ってゆく。
お客が帰ってゆくと僕は洗い場に呼ばれた。
洗い場に行くと汚れた食器が山積みになっていた。
それを洗剤で一皿一皿洗ってゆく。
洗い場での仕事に付き物なのは手荒れだった。
僕はこのバイトを始めてから手荒れが酷くて悩んでいた。
一通り食器を洗い終わると僕はカウンターに入った。
そこで、カウンター越しにお客さんと話をするのだ。
それが、バイトである意味愉しみでもあった。
「薫くん、今日は災難だったな?」
先ほどの出来事を見ていた常連客の初老の男性からそう声を掛けられた。
この初老の男性は僕の家の近所に住んでいる人だった。
「はい、ちょっと納得いかなくてムカつきますよ…」
「ま、そう怒るなよ。人生生きてりゃ色々あるさ…」
初老の男性はそう言うと“はははっ”と笑うのだ。
森山さんは僕の方を見ている。
ひとり、ボトルキープしておいた焼酎を飲んでいるらしかった。
森山さんは本当に毎日の様にこのダイニングバーに来ている。
「森山さんは毎日の様にこのお店に来てますよね?」
僕は森山さんにそう声を掛けた。
森山さんは少し酔っぱらったようにして僕の問いかけを聞いている。
「そうだな、定休日以外は毎日来てるなぁ…」
「森山さん、結婚してないんですか?」