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好きになったら止まらないっ!
第1章 私の王子様
「ありがとう」
 水を受け取ると、司は一気に半分近く飲み干す。
「こういうファッションが好きでさ。声が声だし、胸もほら……、ないから……。よく勘違いされるんだよね」
「あの、本当にごめんなさい!」
 彼の……否、彼女のコンプレックスに触れた気がして土下座をすると、司は苦笑しながら顔をあげさせる。

「女の子に告白されることはしょっちゅうだけど、既成事実作ろうとしたのは君が初めてだよ。ごめんね、女でがっかりしたよね?」
「いえ、がっかりなんてしてないです」
 即答する六花に、司は一瞬目を丸くし、こらえきれずに吹き出す。
「ふ、あははっ! 君って本当に面白い子だよね。今までの子は、僕が女だって知ると、幻滅して離れていっちゃうんだけど」
「だ、だって、あんなこと、しちゃいましたし……。冷静に考えて、めちゃくちゃ最低じゃないですか、私」
「うん、それは否定しない」
 きっぱり言われ、肩を落とす。そして絶望的な未来を想像してしまった。

 ――はぁ、嫌だな。相手が完璧な王子様だからって、グイグイ行き過ぎて犯罪犯しちゃったし、相手は女性だったし。トラウマ植え付けてなきゃいいんだけど……。というか、私これから通報されるのかな? お父さん、お母さん、ごめんなさい……。あなた達の娘は恋に飢えて最低で変態的な犯罪を犯しました。
 私はこれから刑務所に入って、罪を償います。そして、社会的に死にます。

「でも、ちょっと嬉しいかな」
「嬉しいって……?」
 顔をあげると、司は照れくさそうにはにかんでいる。何故彼女がそんな顔をするのか分からず、六花は首をかしげるばかり。

「君みたいに既成事実を作ろうって子はいなかったけど、強引に関係を進めようとする子はいてね。女だって言っても信じてくれないし、恥ずかしいの我慢して、服を脱いで証明したら、『騙された! 最低!』なんて言うし。僕としては、女の子と恋愛したいんだけど、難しくて」
「私が彼女じゃダメですか?」
「へ?」
 自然と口から出た言葉に、司は素っ頓狂な声を出す。六花自身も自分の言葉に驚いたが、ここで引き下がるつもりはない。
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