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君とセカンドラブ
第13章 筆下ろしのお手伝い
夕飯は久かたぶりに「すき焼き」だった。
明日香の誕生日だというのを
こっそり葵が誠一に教えていたので
極上の牛肉を買ってきてくれた。
それだけじゃなく
有名パティシエのバースディケーキさえ準備していた。
『いいぞ、オヤジ!
これは高得点をゲットしたな』
遼太は黙々と牛肉ばかりを口に頬張った。
「遼太さん、お野菜も食べないと…」
葵が、それとなく遼太に注意した。
「いいのよ、お兄ちゃんは食べ盛りなんだから」
ポツリと囁いた明日香の言葉に
一同は驚いた!
今まで食事中に会話なんて皆無だったのに
明日香から口を開いてくれたことに遼太以上に誠一と葵が目を皿のようにして驚いた。
「そうか、そうか…遼太は育ち盛りだもんな
明日香ちゃんも遠慮しないでどんどんお肉を食べなさい」
気をよくした誠一は自分が食べることさえ忘れて
せっせと鍋奉行に徹した。
「お父さん…今夜はありがとう…」
食事を終えて、バースディケーキのろうそくに灯をともし、吹き消す前に明日香が誠一に礼を言うものだから、写真を撮影するためのスマホを思わず床に落として、誠一は肩を震わせて泣いた。
「父さん、大袈裟だなあ
明日香だって礼ぐらい言えるさ」
ふと気づけば誠一だけでなく
葵も泣き出していてソッとハンカチで目元を拭っていた。
明日香は誠一を父として認めた訳ではなかった。
ただ、将来的に遼太と結ばれたならば
正真正銘の義父として嫁として今から慣れておこうと思っただけだ。
それでも、こうして喜んでくれるなんて
自分が少しずつ素直になれたのも遼太のおかげだと思った。