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君とセカンドラブ
第3章 葵という女

ある日のこと、
母が風邪を引いてキッチンを休んでしまい、
その日はてんてこ舞いでした。

そんな日に限ってキッチンの利用者が多くて
洗い物も山のようでした。
当然、洗い物は新入りの葵の役目なので
夜遅くまで作業をしなくては行けません。

「一人で大丈夫?
手伝ってあげようか?」

最古参の康子さんが見かねて声をかけてくれましたが、母が休んでしまいみんなに迷惑をかけてしまったという引け目から「いえ、全然大丈夫です。たぶん日付が変わらないうちに片付くと思いますので…」なんて強がりを言ってしまいました。

とりあえず声を掛けただけで
心底手伝おうという気持ちがない康子は
「そう?じゃあ、帰りは気をつけて帰るのよ」と
一応、声は掛けたという自己満足でさっさと帰ってしまった。

日付が変わるとボイラーの火が落とされたのか
お湯も出なくなり、水で洗い物をしていると指が千切れるのではないかと思うほど冷たさで痺れてきた。
それでも午前一時には全てを片付けてようやく帰れると思った矢先、横須賀に赴任したての若い黒人兵士数名が「腹が減って眠れないんだ。軽いものでいいから何か食わせてくれよ」と無理を言ってきた。

「ごめんなさい…
もうとっくに閉店しているので…」

そう言って断ると、ものすごい形相で睨み付けてきた。
あまりにも怖いので「サンドイッチでよければ…」と仕方なく夜食を作ってあげることにした。

「ハムサンドしか用意できないけれど」

三人分のハムサンドを皿に乗せて
さっさと食べて帰ってほしいと思って差し出すと
「ここは寒くてイヤなんだ、部屋まで運んでくれよ」とサンドイッチを運べという始末です。

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