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君とセカンドラブ
第15章 喪服の女
「君が明日香の義理のお兄さんになるわけね」
背後から声をかけられて
振り向くとそこにはビール缶を手にした一人の女性が立っていた。
「えっと…あなたは…」
葬儀の前に一通り親戚の方々と挨拶を交わしたが
到底それがどんな人でなんというか名前か何て覚えていない。
「ちゃんと自己紹介していなかったわよね
私、明日香とは再従姉妹(はとこ)になる真弓よ」
一人で退屈でしょ?
なくなった祖母を忍んで献杯に付き合ってよと
コーヒー缶を遼太に向かって投げてくれた。
危うく取り落としそうになったが
なんとかキャッチすることができた。
「ありがとうございます。頂きます」
プルトップを引いて冷たいコーヒーを喉に流し込む。
「ね、今夜、よかったらウチに泊まりに来ない?」
おもむろにそんなことを言われて
遼太は思わず噎(む)せてしまった。
けほっけほっと咳き込みながら
「泊まらなくても、ここからなら東京にすぐに帰れますから」と真弓の誘いをやんわりと断った。
「帰れるのは百も承知よ
こうして遠縁とはいえ親戚になったんだから
ゆっくりとお話がしたいのよ」
『親戚』というワードに遼太は心が揺れた。
父の誠一も一人っ子なので
遼太には従兄弟(いとこ)がいない。
親戚の人たちは東京近辺にはおらず、
今後、なにかと相談できるかもしれないし
親類関係は大切にしておきたいと思った。