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残り火
第1章 焚き火
街灯がぽつぽつと輝きはじめ、
歩道から見るショーウィンドウの内側は、
まるでうんと年上の親しいおじさんの懐のように、
優しくて温かそうに見える。
それが俊郎なら、煙草のにおいもするかもしれない。
もう二度と外に出たくなくなるかもしれない。
私は私の大好きな男に会うために、
夕暮れ時の街を歩いている。
暗くなるのが早くなった。
日の光は、私を不安にさせる。
夜のほうが断然、私は生き生きとしてくる。
気づけば早足になっている。
腕時計で時間を確認して、
このままだと待ち合わせ場所に早く着きすぎてしまうことに気づき、
ペースを落とす。
でも気持ちは早足のままで、
早く早くとせっついてくる。
がっつきすぎ、と自分を笑い、
落ち着くために、コーヒーが必要だと思った。