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残り火
第7章 残り火
 もはや私にできるたったひとつのことは、
このまま静かに俊郎の前から消えることだけ。
俊郎も私も、お互いを唯一無二の相手だと理解していた。
それでも、別れなくてはならない。
どうしようもないことなんて、いくらでもある。
この世は、理不尽なことだらけ。

 せめて俊郎のことを嫌いになれていたら、
こんなに苦しくなかっただろうけど……

 ばかな俊郎。

 どんなに嫌われようとしたって、
私が俊郎を嫌いになれるわけない。
どんなにひどいことをされたって。
私は悲しみこそすれ、嫌いになんかなれない。
そんなこともわからないなんて。

 でももう終わり。
終わったのだ。

 どういう順路をたどったか覚えていないけど、
私は夫と暮らす部屋に帰っていた。
結局、ここが私の帰る場所。
私が居るべき場所。

 私は私の居場所にうずくまって、
恋の残骸を眺めている。
いずれ掃き集めて処分しなくてはならないけど、
今はまだその気になれない。
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