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残り火
第7章 残り火
 腑に落ちた。

 もしも俊郎が病気の妻の目を盗み、
私と会い続けるような男なら、
私は俊郎を心底軽蔑するだろう。
そして私は、私を許すことができなくなる。
悲しみの淵に沈みこみ、
浮き上がってこられなくなる。

 最初から勝ち目などなかった。
妻と私、どっちがより俊郎のことを愛しているとか、
愛されているとか、そんなことは関係がない。
早く出会ったほうが勝ち。
早く周囲に公認されたほうの勝ち。
あとからいくら騒ぎ立てたって、
略奪者のレッテルを貼られてしまうだけ。
表には決して出られない。
日の当たる場所は歩けない。

 それでもいい、と言うには、
俊郎は年を取り過ぎていた。
私たちは、出会うのが遅すぎた。
妻と重ねた年月の重さ。
複雑に絡んだ、俊郎を縛りつけるしがらみ。
見るつもりなんかなかったのに、
垣間見てしまった俊郎の家族。
子や孫たちの笑顔を奪える権利など、
だれも手にすることはできない。
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