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天空のBlack Dragon
第3章 描く
我が子が私の腕から降りて走っていく。彼のお絵描き帳とクレヨンが投げ出されている。立ち上がった私はダイニングテーブルへ移った。テーブルの上にはうまそうな食事が並んでいる。
「今日は暑いからさっぱりとサラダそうめんにしたの」
「うん。いいね。ありがとう。そういえば小山君に会ったよ」
「ああ、ちょっとお調子者の彼ね」
「呑みに誘われたが断った」
「彼ってまだ独身だっけ」
「そうじゃないか。結婚したとは聞いていないから」
専業主婦になる前、妻は私と同じ会社に勤めていた。いわゆる職場結婚だ。だからお互いの共通の知り合いの話題に花を咲かせることも珍しくない。妻に相槌を打ちながら私の意識はどこか上の空だった。
さっきから何かが引っかかっている。いつもどおりの平和な我が家なのに、何か大事なことを忘れている、もどかしいようなそんな感覚だ。
「それでどうなの」
「えっ。どうなのって何が?」
「もうあなたったら。うちの会社はどうなのって聞いたのよ。買収されるとか噂があったじゃない」
「ああ。その話か」
「今日は暑いからさっぱりとサラダそうめんにしたの」
「うん。いいね。ありがとう。そういえば小山君に会ったよ」
「ああ、ちょっとお調子者の彼ね」
「呑みに誘われたが断った」
「彼ってまだ独身だっけ」
「そうじゃないか。結婚したとは聞いていないから」
専業主婦になる前、妻は私と同じ会社に勤めていた。いわゆる職場結婚だ。だからお互いの共通の知り合いの話題に花を咲かせることも珍しくない。妻に相槌を打ちながら私の意識はどこか上の空だった。
さっきから何かが引っかかっている。いつもどおりの平和な我が家なのに、何か大事なことを忘れている、もどかしいようなそんな感覚だ。
「それでどうなの」
「えっ。どうなのって何が?」
「もうあなたったら。うちの会社はどうなのって聞いたのよ。買収されるとか噂があったじゃない」
「ああ。その話か」