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天空のBlack Dragon
第1章 ある晴れた夏の日に
 窓の外、どれぐらい離れているのか?五キロか十キロ先なのか?いやもっとかもしれない。大きすぎて距離感が掴めない。とにかく巨大な黒い物体が浮いていた。街を二つ三つ合わせたような大きさだ。視界のおよそ半分がそれで占められている。もくもくした白い積乱雲と真っ青な夏空を背景にその黒い輪郭がくっきりと際立って見える。
 それはドラゴンだった。ドラゴンにしか見えない。竜だ。翼の生えたあのドラゴンだ。鉄でできた巨大な黒いドラゴンに見えた。
 なぜそれがわかるのだろう。その理由は自分でも不明だったが、とにかく鉄のドラゴンだ。
 大空に広げた巨大な黒い翼がゆっくりと上下に動いていた。降り注ぐ真夏の強烈な日差しが反射して、時々、ギラッと光る。
 空の高みに浮かんでいるドラゴンの下には東京の街がある。今、私がいるこのオフィスビルは都心から少し外れた地域にあり、数十キロ離れた先まで隙間なくびっしりと建物がある。ドラゴンはその遥か上空にいた。
 しかしそれらの建物の群れにドラゴンの影が落ちていない。巨大な鉄のドラゴンには影がなかった。
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