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君に愛されて重かった 三流力士と限界キャバ嬢
第1章 第1話 限界キャバ嬢、ミズキ様
 わざわざ自分から指名してくれたお客さんを断る理由もないので私はその力士さんを担当してあげることにして、目立たない場所に座りたそうな力士さんの希望に応じて店の隅の座席に腰掛けた。

 一応人気キャストである私は普段は店の真ん中辺りで接客しているのでこの辺りから店内を眺めるのは珍しいと感じていると、力士さんはおずおずと自己紹介を始めた。

「あの……ミズキ様。今日はよろしくお願いします。僕、今年で23歳になる序二段の力士で四股名は|鬱之郷《うつのさと》っていいます。キャバクラに来るのって初めてで……」
「あらそう、そうやって自分が不慣れだと自覚している男性は嫌いじゃないわよ? あたしも一応自己紹介しておくけど、この店に務め始めて4年目になるキャストのミズキです。ここだけの話だけど、実はミズキって本名と同じ名前なの。もちろん漢字は非公開よ」
「やっ、やっぱり!? やっぱり君は……」

 鬱之郷と名乗った力士さんはそう言うと大きな両手でテーブルに置かれていた私の手を握り、私は気弱な男性の突然の接近に珍しくドキッとした。

「どうしたの? それは初心者の強がりかしら?」
「小学校と中学校で一緒だった|瑞貴《みずき》ちゃんだよね!? 僕だよ僕、覚えてる? 中学校でバスケ部員だったタカトだよ」
「はいっ!? いやそんな、私お相撲さんの知り合いなんて……」

 思わず一人称を忘れつつ呟いた私だが、丸々と太った鬱之郷の顔を見ているとある人の面影が浮かんできた。

 そういえば千代田区内にある公立小学校の幼馴染で、お互い進学した公立中学校ではバスケ部に入っていた男友達があの頃……

 あの頃……
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