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がんばれ!赫鎧鈴乃ちゃん
第1章 悪夢の始まり
 制服に着替え道場をでると看板に背を預けて墨田が待ち構えていた。
 その足元には数本の吸い殻。あろう事か道場看板に数カ所煙草を押し当てて消した焼け焦げがついている。
 これが剣を学んだ大人のすることだろうか。
 「2分の遅刻だ。グズめ!」
 「レディーの着替えに時間が掛かるのは当たり前でしょ!」
 精一杯の反論も鼻で嗤われる。
 「レディー?臀肉の硬てぇ餓鬼が粋がるな!」
 言い終わるなりお尻に痛みが走る。
 触られた?
 うぅん。掴まれた。
 逆らった後の反撃が怖いなどと考える間はなかった。
 反射的に右手が上がり墨田の頬を目指して振り下ろされる。
 バチン!小気味いい打擲音が響く予定が掌が頬に触れる前に手首を掴まれる。
 さっき臀朶を掴んだ手で今度は左胸を鷲掴みされる。
 「こ、この変態。」
 あらん限りの大声が放課後の校庭に響く。
 下校中の生徒何人かが足を止めこちらに視線を送る。
 これだけ目撃者が居ればこれ以上変な事は出来ないだろう。
 「やれやれ。制服の埃払ってやっただけでセクハラとは嫌な世の中だ。鈴乃、ケツにゴミが付いてるぞ。払ってやるから動くなよ」
 態とオーバーリアクションで私のお尻を叩き撫で回しながら顔を耳に近付ける。
 「緑谷の尻の方が触り心地よさそうだな。」
 いったい何日何ヶ月歯磨きしてないんだろう。形容し難い口臭が鼻腔を横殴りにする。
 ドスの効いた恫喝声に立ち止まった生徒達は蜘蛛の子を散らすよう消えた。
 「さあ、帰るぞ鈴乃!」
  
 校門を出て最寄り駅「四神駅」までの道程私達は多くの人の注目をひいた。
 名門女子校の生徒が蟷螂か893にしか見えない下劣な男に下の名を連呼されながらピタリと並び歩き時折尻肉を揉まれているのだ。
 サラリーマンや近所の高校生が何人もスマホを向けカシャカシャとシャッターを押している。
 「コーチ、止めて下さい」
 卑劣な痴漢行為を制止するのに懇願するしか無い。
 「コーチ?」
 粘度を300%増したネチッコイ声が耳孔から脳を侵し背筋を悪寒が走る。
 「猛様。お願いですからこんな所でお、お尻を嬲らないで下さい。」
  懇願が届いたのか墨田の手がお尻から離れ私の肩を抱く。
 これはこれで厭だが衆人環視野菜花で尻を弄ばれるより百倍ましだ。
 改札を潜るまでの数分間顔をあげれなかった。

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