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人妻愛人契約
第7章 移りゆく季節の中で~春、パンドラの箱
美しかった。桜色の着物に金色の帯がスポットライトを浴びて輝いている。全員が魅入られたような目で希実を見ていた。

希実はマイクの前に立つと、会場を見渡し、ニッコリと微笑んだ。

「あけましておめでとうございます。広報室長を仰せつかっている良泉館の深田希実です。突然の指名にびっくりして何を話していいかわかりませんが……三河屋さん、この借りは、今度のイベントのとき、きっちりと返させていただきますので、覚悟してくださいね。三河屋さんに似合いそうな可愛いミニスカートの衣装を用意してあげますから」

希実が振り返り、茶目っ気たっぷりな目で善一を睨んだ。善一が、しまった、というようにおどけた顔をした。会場がどっと沸いた。

「今回のイベントでは、日本だけでなく外国からも、年齢を問わず多くの人に参加してもらって、東ノ沢温泉の魅力を楽しんでもらいたいと思っています。コスプレは、皆さんにはあまり馴染みがないかも知れませんが、本当の自分、なりたい自分を表現できる素敵なパフォーマンスです。ぜひ皆さんも一緒にコスプレをして、イベントを盛り上げてください。よろしくお願いします」

希実は、まるでスターがフィナーレを飾ったあとのようにゆっくりとお辞儀をした。会場から割れんばかりの拍手が起きた。さすがにエルメスとして一世を風靡したことのある希実だった。祐樹も力一杯拍手を送った。
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