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人妻愛人契約
第7章 移りゆく季節の中で~春、パンドラの箱
「そう言えば、あの時、聞かれたことに答えてあげましょうか」

「なんでしたっけ」

「希実さんが感じてしまうかどうか……」

「ああ、それならもういいです。希実に聞きましたから」

ふーん。沙耶は、聞けたんだ、意外、という顔をした。

「そうですか。それで希実さんは何て言ってました?」

「それは秘密です」

「秘密?」

「はい、夫婦のプライバシーですから」

「なるほどね」沙耶は、シャンパンを一口飲んだ。「女が感じるのは好きな人に抱かれたときだけ……。おそらく希実さんは、そんな感じで答えたんでしょうね」

「まあ……」

「よかったですね。でも、祐樹さん、気をつけたほうがいいですよ。男と女の関係は分かりませんから」

「どういう意味ですか」

「最初は嫌いでも身体を重ねているうちに好きになってしまうことがあるってことです」

気にしていることを指摘されグサッときた。祐樹の顔が赤く染まった。

「そんなこと希実に限ってあるわけないですよ!」

祐樹は、自分に言い聞かせるように言った。沙耶は、そんな祐樹の顔を面白いという目で見つめた。

「そうでしょうか。しっかりした女性って意外と弱かったりするんですよ。ほら、堅い木って弱い力にはビクともしないけど、強い力を加えるとポキッと折れてしまうことがあるでしょう」

「何が言いたいんですか?」

沙耶は答えず、フフッと微笑み、それではまた、と会釈して去っていった。

しゃなりしゃなりと揺れる形のいいお尻を見ながら、祐樹は、ふう、と息を吐いた。

嫌な話を聞いたな。気持ちが暗くなっていく。

希実の方に目を向けると、相変わらず善一の隣にいる。いまは何人かの女将と一緒に楽しそうに話をしている。見ているだけで、心がムカムカする。辛かった。祐樹は、ひっそりと会場から出た。
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