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人妻愛人契約
第7章 移りゆく季節の中で~春、パンドラの箱
10分ほどで作業は終わった。

「これで大丈夫だ」

祐樹はパソコンを再起動し、動作を確認した。特に問題はない。ソフトもちゃんと起動する。

「念のためデータファイルに問題ないか確認しておいたほうがいいな。三河屋さんは、データには触るなと言っていたけど、ファイルのプロパティを見るくらいなら問題ないだろう」

データが入っているフォルダは1つしかなかった。「Lovers Memory」というフォルダ名がついている。

「恋人たちの思い出か」

祐樹はクリックした。

「何だよ、これ――」

中には20個くらいのフォルダが入っていた。Arisa、Aya、Hitomi……全て女性の名前らしきフォルダ名がついている。Nozomiという名前もあった。

嫌な予感がする。

祐樹は、Nozomiというフォルダをクリックした。

動画ファイルが並んでいた。日付がファイル名になっているようだ。

一番古いファイルは、昨年4月になっている。あの日だ。

まさか――!

心臓が早鐘を打った。かつて妄想した淫らな映像が再び頭の中に浮かんできた。股間のモノが硬くなっていく。

果たして、本当にそういうものなのか。見たかった。見て確認したかった。

でも……。

ファイルは絶対いじらないという善一との約束がある。それに、これはパンドラの箱だ。見たら最後、自分がどうなるかわからない。おかしくなってしまうかも知れない。希実との関係だって壊れてしまうかも知れない。

祐樹は、じっと画面を見つめた。

5分くらいそうしていただろうか。額に汗が浮いてきた。

「ふう~」

祐樹は大きなため息をついた。

でも、少しくらいなら……。

マウスを動かし、カーソルを4月の日付のファイルの上に置く。あとは人差し指に力を入れるだけだ。

「すう~、はあ~」

息を大きく吸って、吐き出してから、

「いくぞ」

マウスをクリックしようとした、まさにその時だった。

コン、コン、コン。

ドアを叩く音が聞こえた。
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