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人妻愛人契約
第8章 あの夜の出来事
ひとしきり泣くと、気持ちが少し落ち着いてきた。祐樹は腕で涙を拭った。

泣いていてもしょうがない。問題はこれからだ。

祐樹は考えた。

希実は失神させられても避妊については最後まで守り通した。まだ善一の手に完全に落ちたわけじゃない。

「よし……」

祐樹は、ティッシュで吐き出した精液の後始末をすると、下着とズボンを履いた。バッグの中から外付けハードディスクを取り出した。

さっき考えたように、まずは真実を知ることだ。このあと二人の関係がどうなったか確認する。どこまで深まったのか。深まってないのか。どうするかは、そのあと考えればいい――。

ハードディスクをパソコンに接続し、Nozomiというフォルダをフォルダごとコピーした。

「それにしても希実さんはやっぱりすごいな……」

コピー進行中の画面を見ながら、祐樹はこの日のあとの希実の態度や行動を思い返していた。

希実は変わらなかった。何事もなかったかのようにリーダーとして自分や旅館の人たちを引っ張ってくれた。善一と会ったときも媚びたり、卑屈な態度を見せたことはない。希実の芯の強さに善一もきっと舌を巻いているに違いない。

そうか。それが返って善一を希実に執着させるんだ。男の征服欲、完全に自分のものにしたいという欲望を刺激して。

祐樹も男だから同じ欲望を持っている。希実を取られたくない、他の男に渡したくないという強い思いを持っている。

でも――。

動画を見ながら感じたざわざわとした得体の知れない興奮が蘇ってきた。柔らかくなりかけていた肉棒が硬さを取り戻していく。

「ダメだ!」

祐樹は邪念を振り払うように頭を大きく振った。

コピーが終わった。祐樹はハードディスクを取り外し、バッグにしまった。パソコンの電源を切って席を立った。

部屋を出る前に、もう一度、中を振り返る。

大丈夫。忘れ物はない。床の汚れもきちんと始末した。

確認してからドアを閉めた。
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