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第1章 10億の借金

しかし、３人の努力も既に限界を超えていたのだろう。翌朝、慎吾が倒れた。救急車で運ばれたという連絡を奥さんの清美から受けた希実と祐樹が急いで病院に駆けつけると、慎吾はベッドで点滴を受けていた。

病室に入る前に清美に聞くと過労が原因らしい。もともと持病があるらしく、医者からは、最低でもひと月は休んだほうがいいと言われたそうだ。

いま慎吾がいなくなるのは厳しい。二人はショックを受けたが、人の健康には代えられない。希実は、「わかりました」と頷くと、「ゆっくり休ませてあげてください」と清美に言ってから病室に入った。

「女将、面目ありません。おいしいプリンまでいただいたのに」

慎吾は希実の顔を見ると弱々しい声で言った。　

「いいのよ。慎さん、こっちはわたしと祐樹で何とかするから、ゆっくり休んで」

「でも――」

無理に起き上がろうとする慎吾の肩を希実は抑えた。

「これは女将としての命令です。一か月間の休暇を命じます」

「女将……」

泣きそうな顔の慎吾にむかって希実は微笑むと、

「本当に大丈夫だって。私、父さんの子なんだから」

慎吾を励ますように軽く2回、肩を叩いた。