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人妻愛人契約
第11章 恋人たちの思い出~冬、電話の向こうで
だらだら続いた会議は、5時過ぎにようやく終了した。

「やっと終わった」

祐樹が旅館組合の玄関を出たところで両手を上げて伸びをしていると、

「深田さん」

背後から声をかけられた。

振り返ると30半ばくらいの女性が立っている。

「あれ、琴音さんじゃないですか。沖縄じゃなかったんですか?」

「いま帰ってきたところです」

琴音は小ぶりのスーツケースを引いていた。

「研修は3泊って聞いてましたけど、何かあったんですか?」

「みんなで一緒に泊まる研修は2泊で、あと1泊はオプションなんです。残りたい人だけ残って自由行動になってるんです」

「自由行動?」

「はい。好きなホテルに行って泊まっていいんです。せっかくの機会ですから私もどこか人気のリゾートホテルに泊まってみたかったんですけど、用事があったんで帰ってこなくちゃいけなくて」

「そうなんですか。それは残念でしたね」

「ええ、本当に」琴音はちょっと悔しそうに堀の深い整った顔を顰めた。「希実さんには、本当にお世話になりました。コスプレは初めてでしたけど、すごく楽しかったです」

「ステラになったんですよね。写真見ました」

「あれを見たんですか! きゃ、恥ずかしい……。主人には絶対見せないでくださいね」

琴音がポッと顔を赤らめた。

「え、どうしてですか? すごくかっこよかったのに。見せてあげたら、篠原さん、喜ぶと思いますよ」

「本当ですか?」

祐樹は頷いた。

「すてきでした」

「そう言っていただけると嬉しいです」

琴音はハニカミながら微笑んだ。年上だけど可愛い人だ。

「希実さんにくれぐれもよろしくお伝えください」

琴音は頭を下げると、スーツケースを引いて去っていった。

その後ろ姿を見ながら、祐樹は胸の中がモヤモヤするのを感じた。

3泊目はオプションか。希実はそんなこと言ってなかった。善一が出張というのも気になる。まさかとは思うけど……。
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