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人妻愛人契約
第13章 奪還
――このままだと俺に溺れてしまいそうなんで怖くなったか。

三河屋さんは言っていた。そうなんだろうな。希実さん、三河屋さんの身体に溺れちゃったんだろうな。

――あなたなんか大嫌い。

希実さんは三河屋さんに言った。でも本当に嫌いならあんな言い方しないよな。

――最初は嫌いでも身体を重ねているうちに好きになってしまうことがあるってことです。

沙耶さんの言う通り、好きになっちゃたってわけだ。

――堅い木って弱い力にはビクともしないけど、強い力を加えるとポキッと折れてしまうことがあるでしょう。

折れちゃったんだ。本当に。心まで。でも……。

――祐樹、助けてぇぇぇぇっ。

あの時の叫び声。希実さんの心の中には、まだ僕が残ってる……。

きっと希実さんだって辛いんだ。自分がどうなってるか、どうしていいかわからなくなってるに違いない。だったらまだ僕にもチャンスはある……。

そう考えると、動画は僕にとって本当にパンドラの箱だったのかも知れない。パンドラの箱の話って、神様の忠告を聞かずにパンドラが箱を開けてしまい、あらゆる災いが地上に放たれちゃうんだけど、希望だけは箱の中に残ってるんだったよな……。

三河屋さんのいじるなという言葉を無視して動画を開いてしまった僕に、動画はとんでもない災いをもたらした。知らないほうが幸せだったのかもしれない。けど知ってしまった。それが災い。そして、最後に残ったのが希望。

最後の希望……のぞみ、か……。

偶然だけど悪くない話だ。

そう言えば、この話って、もともとプロメテウスっていう神様が、人間たちに火を使うという技術を勝手に教えちゃって、それに怒ったゼウスっていう神様が懲らしめてやろうと、絶世の美女パンドラをつくって送り込むんだっけ。人間たちに災いをもたらすために……。

技術が争いのもとになるとはねえ……。

僕のような技術屋はやってられないよなあ……。

技術……。

ん!?

「そうだ!」

祐樹は起き上がった。

「希実さん、待っててね。僕が希実さんを助けてあげるから――」

枕元に置いてあったスマホを取ると、電話帳アプリを起動した。

「は行、は行……。あった! これだ!」

祐樹はもう一度名前を確認してから通話アイコンをタップした。
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