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人妻愛人契約
第13章 奪還
「ねえ、希実さん、もし三河屋さんに借金を返して愛人契約を終えることができたら、三河屋さんと別れることができる?」

「……借金を返すなんて、そんなことできるの?」

「できるよ。顧客管理システムをつくったろう。あの仕様書と基本設計書を羽鳥さんに送って見てもらったんだ」

「羽鳥さんに?」

希実は顔を横に向けて祐樹の顔を見た。羽鳥は、希実と祐樹が勤めていたムゲンアーキテクトの役員だ。新規事業開発を担当している。

「うん。そうしたら、旅館だけじゃなく、飲食店や小売店にもこのシステムは使えるんじゃないかって。お金は出すから、一緒に新しい会社を立ち上げようって言ってくれた」

「本当に!?」

希実のアーモンド型の目が驚いたように大きく開いた。

祐樹は頷いた。

「旅館の借金の話もしたら、10億は無理だけど、1億くらいのお金は新会社の設立資金としてすぐに出してくれるって。そのうちの半分は、これまで僕たちが開発したシステムの買取費用として良泉館に渡すから好きに使っていいって」

「すごい……」

「だから、希実さん、三河屋さんと別れて欲しい。そして、もう一度、二人でやり直したい。それが僕の考えだ」

「ダメだよ、祐樹、そんなの……」

「どうして?」

「祐樹にそこまで甘えられないよ。悪いのは、わたしなのに。何も罰を受けないでそんなこと……虫がよすぎる……」

「罰って、希実さんは、もうたくさん罰を受けたじゃないか。一番、辛い思いをしたのは希実さんなんだから」

「でも……」

「それとも、三河屋さんと別れられないの?」

希実は頭を左右に振った。

「あの人とは別れるわ」

「だったら、二人で、いや愛未も一緒に三人でやり直そうよ」祐樹は希実の肩を両手で掴み、正面から希実の透き通るような明るい茶色の瞳を見つめた。「希実さんへの罰は、僕と愛未をたくさん愛すること。うんとうんと愛すること。それでいいだろう」

「祐樹――」希実は、泣きながら祐樹の首に腕を回して抱きついた。「ありがとう、祐樹」

そのまま二人は唇を重ねた。
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