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人妻愛人契約
第13章 奪還
その夜、祐樹はあえて希実を求めなかった。

4日間、破廉恥な動画を見続けた身体は、希実を欲していた。希実の身体の中に入りたいと主張するように股間のモノはカチカチに硬くなっていた。だが祐樹はぐっと堪えた。

「三河屋さんとの方がすべて付いてから希実さんを抱きたい」

祐樹は希実に言った。

「わかった。祐樹の好きなようにして。わたしはそれでかまわないから」

希実は頷くと、寄り添うにように祐樹の胸に顔を埋めた。

「希実さんが泣くのは、あの日以来だね」

「そうね。あの日以来ね。また、あれを言うつもり?」

「いや、今日は言わない。希実さんが女の子だって知ってるから。強がってるけど、本当は臆病で傷つきやすい女の子だって知ってるから」

「祐樹……」

希実は祐樹の胸に顔を擦りつけて泣いた。華奢な肩が小刻みに震えている。その肩を祐樹は子どもをあやすようにポンポンと軽く叩いた。

「祐樹は本当にわたしのダンだね」涙を流しながら希実が言った。「ダン・ムートっていう名前の意味、知ってる?」

「知らないけど」

「ダンは日本語の暖。暖かいっていう意味。ムートはドイツ語で勇気っていう意味よ」

「へえ、そうなんだ。勇気か。日本語にすると、僕の名前と発音が同じになるんだね」

「そうよ。勇気があって、暖かい。それがダン・ムート。キミよ」

「なんだか褒められたようで嬉しいよ」

「褒めてるのよ」

「そうか。ありがとう。リナにはどんな意味があるの?」

「スペイン語でリナは戦い。エスペランサは希望っていう意味よ」

「戦う希望か。やっぱり希実さんは希望だったんだ。パンドラの箱だ」

「なに? パンドラの箱って」

「今度ゆっくり教えてあげるよ」

祐樹はもう一度希実の口を吸った。優しく。

応えるように希実も吸い返してくる。優しく。

「希実さん、子どもをつくらないか。愛未の弟か、妹を」

「うん」

希実は頷いた。

「どっちがいい? 僕は今度は男の子が欲しいかな」

「わたしはどっちでもいい。祐樹の子なら」

「そうか」

二人はもう一度唇を重ねると、舌を絡め合った。

窓から月明りが差している。その白い光が慰めるように優しく二人を照らしていた。
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