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人妻愛人契約
第13章 奪還
金曜日、祐樹は希実と一緒に東京に向かった。

希実は紺のパンツスーツを着ていた。テーパードのパンツは、足首に向かって先が細くなっていて、希実のスラリとした足が美しく強調されていた。インナーは白のカットソー。祐樹は、いつものとおり紺のスーツだ。

久しぶりの古巣、ムゲンアーキテクトでは役員の羽鳥が直接二人を出迎えてくれた。

役員と言っても羽鳥はまだ41歳。学生時代にラグビーをやっていたラガーマンで大きな身体をしている。今でもサークルでやってるらしく、贅肉のないシャープな体型をしていた。

「久しぶりだな、伊東」

白い歯を見せて羽鳥が希実に歩み寄ってきた。

希実は微笑みながら、

「羽鳥さん、ご無沙汰してます。でも、今は深田ですよ」と挨拶を返した。

「知ってるよ。でも、深田が二人いるとめんどくさいだろう。だから、俺は伊東って呼ばせてもらう。いいだろう?」

「わかりました。それで結構です」

「よしよし」羽鳥は嬉しそうに頷くと、祐樹のほうを向いた。「しばらくだったな、深田」手を差し出してくる。

その手を祐樹は握った。

「羽鳥常務、今回はありがとうございます」

「礼を言うのはこっちだ。あんないいシステムをつくってくれて。これから一緒に仕事ができるのが楽しみだよ」

「はい、よろしくお願いします」

祐樹が羽鳥と対等に向かい合っている。昔の祐樹からは考えられないことだ。

希実は、よほど嬉しかったのだろう。微笑みながら目に薄っすらと涙を滲ませていた。
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