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第13章 奪還

会議は6時間にも及んだ。

システムの開発者である祐樹がリードしたが、負けないくらい希実も発言した。

「さすがだな、伊東。相変わらず鋭い」

羽鳥が呻る場面も度々あった。

「やっぱり辞めさせるんじゃなかったな」

そう言って羽鳥は笑った。

ようやく新会社の事業計画がまとまったときには、もう夜の7時を回っていた。

「設立登記に関する資料は全部こっちでつくるから、深田は早速開発に取り組んでくれ」

羽鳥が言って、

「わかりました」

祐樹が答えて会議は終わった。

「今日はこっちに泊まるんだろう？」

「はい」

「だったら一緒に飯でも食おう。いいよな？」

「喜んで」

祐樹と希実はムゲンのメンバーと一緒に食事を取ることになった。

食事と言っても気取ったところで取るわけではない。会社の近くの居酒屋だ。大きな会社になっても、こういうところは創業当時とまったく変わってない。ムゲンらしいと言えば、ムゲンらしい。祐樹は好きだった。

楽しい会合だった。昔のプロジェクトの苦労話に花が咲く。祐樹も希実もよく食べ、よく飲み、よく笑った。

一息ついた頃、羽鳥が、

「それにしてもお前たちが結婚するって聞いたときは驚いたよ」と言った。

「どうしてですか？」

希実が尋ねた。

「どうしてって、伊東は男性社員の憧れの的、高嶺の花だったからな。まさか、あの地味な深田が射止めるとは、誰も思ってなかったんだ」

羽鳥が言うと、周りの人間がみんな頷いた。

「それは羽鳥さん、人を見る目がなかったですね」

からかうように皮肉たっぷりに希実が言った。

「確かにそうだな。今回のプロジェクトを見ると、逃した魚の大きさを改めて感じるよ」

そう言って、羽鳥は祐樹を見つめた。

「そんなでもないですけど……」

祐樹は照れて、そう言ったが、羽鳥に認めらたのは素直に嬉しかった。