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人妻愛人契約
第15章 新しい夫婦のかたち
8時過ぎ、慎吾は出社してきた。他の社員はまだ来てない。聞くなら今が好都合だ。

「慎さん、教えてもらいたいことがあるんだけど」

祐樹は、なるべくいつもと変わらない口調で話しかけた。

「なんでしょうか」

「あそこにあったふくろうの置物がなくなってるんだけど、どこにいったか知らない?」

慎吾の目が祐樹の指先を追った。

「あ、ほとんだ。なくなってる。昨日はあったと思いましたけどね」

「知らないの?」

「ええ、私は知りません」

嘘をついているようには見えない。

「知らないなら、それでいいけど、あのふくろう、どこで手に入れたか覚えてる?」

「覚えてますよ。三河屋さんにいただきました」

「三河屋さんに?」

「はい。一年前ですかね。ここの再スタートの日です。新しい良泉館の門出にお祝いだって言って、くれたんです。縁起物だからどこからでも見えるよう高いところに置くといいよって言われて、神棚の隣に置きました」

「そうか、そういうことだったのか。あの置物、何か変わったところはなかった?」

「特になかったですけど……」

「ケーブルは? 付いてなかった?」

「ありませんでした」

ケーブルがないということは、バッテリーで動かしてたのかなあ。だとすると定期的に電池を替えるか、充電する必要がある……。

祐樹が考えていると、

「社長、あのふくろうがどうかしたんですか?」

慎吾が不審げな表情で聞いてきた。慎吾に余計な心配をかけてもしょうがない。

「いや、なんでもない。それならそれでいいんだ。ありがとう」

祐樹は微笑んだ。

「見つかったら。元に戻しておきますね」

そう言って、慎吾は事務所を出ていった。

ふくろうを置いたのは慎吾だったが、隠したのは慎吾じゃない。隠したほうの人物が善一の協力者ということだ。

誰がいったい……。

思わず祐樹の目が星奈の席に向いた。

「まあ、それもないとは思うけど……」

祐樹は慎吾を疑ったときと同じように頭を振ったが、一度沸いた疑念はなかなか頭から離れなかった。
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