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人妻愛人契約
第17章 冷たい闇
「失礼します」

ドアが開き、頭が白くなった小柄な男が入って来た。

「え!」

希実の瞳が大きく開いた。祐樹もあっけにとられた表情で入ってきた男を見ている。

「驚いたようだな」

善一は気分良さそうに微笑んだ。

「慎さん……」

「どうして、慎さんが……」

希実も祐樹もまだ状況を理解できてない。

「井上は俺の古い友人なんだ。10年ほど前、こいつが女に入れ込んで良泉館の金を使い込んだことがあってな。俺が助けてやったんだ。それ以来の仲さ。一緒にさんざん女遊びをしてきた。こいつが孕ませた女もたくさん知ってるよ」

「そんな、まさか……」あの真面目な慎吾が……。信じられない。「慎さん、ほんとうなの?」希実は聞いた。

「へへへ。女将、隠してましたが本当です」

「清美さんは知ってるの?」

「清美には話してませんが、うすうす感づいてると思います。あいつは大人しい女ですから、私の女遊びに目をつぶってくれてるんでしょう」

慎吾は悪びれたふうもなかった。

「清美さんが可哀そう……」

希実は目にうっすらと涙を滲ませた。

「希実、驚くのはそれだけじゃないぞ」善一は話を続けた。「お前がこの街に帰ってきたとき、俺はお前を手に入れたいと思った。そこでこいつに頼んだんだよ。良泉館の温泉を壊してくれってな」

「えっ!」

希実と祐樹が同時に声を出した。
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