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第2章 三河屋

サンガでは、薄紅色に華やかな薔薇をあしらった着物を着た沙耶が、わざわざ玄関の外に出てきて迎えてくれた。

身長はそれほど高くない。清楚な感じの美しい女性だった。

「お待ちしておりました」

声を聴いた瞬間、アニオタの祐樹はドキッとした。有名なアニメに出てくる赤い目のキャラクターを演じた声優に似ていたからだ。ちょっとアンニュイでミステリアスな雰囲気の声は、見た目の容姿と絶妙に合っていて、沙耶の魅力を高めていた。

「希実さんに、お泊りいただけるなんて光栄です。最高のおもてなしをさせていただくので、今日は、ゆっくりとお楽しみください」

沙耶は最後の、ゆっくりとお楽しみください、を意味ありげに強調して言うと、可愛い口元を妖しく綻ばせた。

希実は表情を一瞬強張らせたが、すぐにニコリと微笑み、

「お世話をおかけしますが、よろしく願いします」と丁寧に挨拶を返した。

「お荷物、お預かりしましょう」沙耶が手を差し出したが、希実は、「たいした荷物ではないので結構です」とあっさり断った。

「そうですか」

沙耶は目を細めて希実の顔を見た。

いきなり始まった女二人のバトルに祐樹はドキドキしながら、よろしくお願いします、とだけ言って頭を下げた。