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人妻愛人契約
第2章 三河屋
「では、こちらへ」
沙耶が良泉館の倍はありそうな大きなガラス戸の玄関前に立つと、ドアが静かに左右に開いた。
「旦那さまから館内を案内するよう申し付かっております。お手荷物は、こちらで部屋まで運んでおきますので、ここにお置きください」
沙耶は、フロント脇にあるテーブルを指した。どうやら本物のマホガニーでできているようだ。木目が美しい。希実と祐樹は言われたとおり、持ってきたバッグを置いた。
「ステキなラウンジですね」
希実は、フロント前の広々としたラウンジを見渡した。ステンドグラスを取り入れるなど基本は洋風のつくりだが、敷物や調度品に上手に和のテイストを入れており、日本旅館の風情も品よく残している。見事だった。若い女性に人気があるわけだ。
「旦那さまが設計し、調度品もすべてご自身で揃えたものです」
「そうなんですか。三河屋さん、自ら……」
祐樹は舌を巻いた。あの脂ぎった顔の中年のどこにそんなセンスがあるのか。善一に対して一種の尊敬のような気持ちが湧くのを禁じえなかった。
「これはどういったものですか?」
壁一杯に掛かった大きなタペストリーを希実が指した。たくさんの色の直線を組み合わせた抽象的な絵が織られている。
「これは19世紀の――」
沙耶が、希実の脇に立ち、説明を始めた。時折、希実が頷いたり、質問したりしている。二人がどういった心情で会話をしているのかわからないが、見た目の雰囲気だけは和やかだった。
沙耶が良泉館の倍はありそうな大きなガラス戸の玄関前に立つと、ドアが静かに左右に開いた。
「旦那さまから館内を案内するよう申し付かっております。お手荷物は、こちらで部屋まで運んでおきますので、ここにお置きください」
沙耶は、フロント脇にあるテーブルを指した。どうやら本物のマホガニーでできているようだ。木目が美しい。希実と祐樹は言われたとおり、持ってきたバッグを置いた。
「ステキなラウンジですね」
希実は、フロント前の広々としたラウンジを見渡した。ステンドグラスを取り入れるなど基本は洋風のつくりだが、敷物や調度品に上手に和のテイストを入れており、日本旅館の風情も品よく残している。見事だった。若い女性に人気があるわけだ。
「旦那さまが設計し、調度品もすべてご自身で揃えたものです」
「そうなんですか。三河屋さん、自ら……」
祐樹は舌を巻いた。あの脂ぎった顔の中年のどこにそんなセンスがあるのか。善一に対して一種の尊敬のような気持ちが湧くのを禁じえなかった。
「これはどういったものですか?」
壁一杯に掛かった大きなタペストリーを希実が指した。たくさんの色の直線を組み合わせた抽象的な絵が織られている。
「これは19世紀の――」
沙耶が、希実の脇に立ち、説明を始めた。時折、希実が頷いたり、質問したりしている。二人がどういった心情で会話をしているのかわからないが、見た目の雰囲気だけは和やかだった。