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人妻愛人契約
第2章 三河屋
最後に、二人は客室棟へと案内された。

「何部屋、あるんですか?」

両脇にドアが並ぶ廊下を歩きながら希実が尋ねた。

「78室です。全室スイートになっています」沙耶は答えると、立ち止まった。「こちらが本日のお部屋になります」

ドアを開けると、玄関があり、その先が短い小廊下になっている。靴を脱いで上がり、正面の襖を開けると、10畳の和室になっていた。座卓と二人分の座椅子がセットされ、おしぼりとお茶菓子が並べられている。隣にもう1つ部屋があり、そこには大きなベッドが2つ並んでいた。

「どうぞ、おかけください」

「でも……」希実は遠慮したが、「今日はお客さまですから」と沙耶に促され、「では、遠慮なく」と二人が席につくと、沙耶は茶器入れから湯呑を取り出し、お茶を入れてくれた。

「本日はお疲れ様でした」

沙耶は、女将らしく両膝を揃えて座り、お辞儀をした。希実と祐樹も会釈を返す。

「こちらこそ、ありがとうございました。サンガさんの素晴らしさがよくわかりました」

「ありがとうございます。希実さんに、そう言っていただけると、とても嬉しいです」

沙耶はニコッと愛くるしい笑顔を見せた。

「これからですが、しばらくこちらでゆっくりとお過ごしください。露天風呂も付いてますので、よろしかったらお使いいただければと思います。旦那さまは、夕食の会場でご一緒させていただきます。

それから、箪笥の中に浴衣を用意してありますので、好きなものを選んで、夕食のときはそれをお召しになってください。旦那さまも浴衣を着るそうです。今日は、硬いことは抜きにして、ゆっくりと話をしましょう、とおっしゃってました」

「わかりました」希実が答えた。

「19時にお迎えにまいります」

沙耶は丁寧にもう一度お辞儀をしてから、小廊下に出て、襖を閉めようとしたが、「そう、大切なことを忘れてました」と途中で手を止めた。

「夕食のあとですが、こちらの部屋には、祐樹さん一人で戻ることになりますので、そのつもりでお仕度ください」

それを聞いた希実の顔からサッと血の気が引いた。フフッ、沙耶は愛らしい口元を綻ばせると、「では、ごゆっくり」と告げて、襖を閉めて出て行った。
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