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人妻愛人契約
第3章 初めての夜
朝食が終わると、善一は「仕事があるのでお先に失礼します」と席を立った。

祐樹は、希実と一緒に部屋に帰ると、希実を力いっぱい抱きしめた。希実を抱きたかった。いますぐ抱きたかった。乾ききった心と身体を癒して欲しかった。

しかし、希実は「ごめんね」と言った。「本当に疲れてるの。夜まで待ってくれないかな」

「希実さん……」

祐樹は希実の顔を見つめた。今にも泣きそうな顔だった。透き通るような明るい茶色の瞳が潤んでいる。

辛かったんだろうな――。

祐樹は、「わかった」と言うと、もう一度、ギュッと希実を抱きしめてから、腕を離した。

家に帰ると、愛未が泣きながら駆けより希実に抱きついた。一晩、両親が揃って留守にすることなんてこれまでなかったから、余程寂しかったのだろう。

「愛未、ごめんね」

希実も目に薄っすらと涙をためて、愛未を抱きしめていた。

「お嬢さん、いい子でしたよ。夜も泣かなかったし、ご飯も全部食べて……ねえ」

清美が、そう言って愛未の顔を覗き込むと、愛未はしゃくりあげながら、頷いていた。

「そう、偉かったね」希実は頭を撫でてやった。「ほら、イチゴのケーキもちゃんと買ってきたからあとで一緒にたべようね」

「わーい。ケーキだ。ママありがとう」

愛未はもう笑顔を見せている。希実も母親の顔になっていた。優しい笑顔で愛未を見ていた。

「祐樹、わたし、愛未と一緒に少し休んでいいかな」

「ああ、いいとも。仕事のほうは僕が適当にやっておくよ」

「ありがとう。愛未、ママと一緒に少し寝んねしようか」

「さっき起きたばかりだよお。ママ眠いの?」

「うん、ちょっとね」

「だったら、愛未が子守唄、歌ってあげる」

「そうか。じゃあ頼もうかな」

「うん」

二人は手を繋いで母屋へ歩いていった。祐樹は二人の後ろ姿を見送った。

本当は希実と話したかったが、愛未がいる。従業員もいる。

しかたないか。

祐樹は夜まで我慢することにした。
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