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人妻愛人契約
第1章 10億の借金
後から思えば、最初にちゃんと良泉館の経営状態をチェックしておけばよかったのだが、当時、希実も祐樹も新しいプロジェクトが立ち上がったばかりで余裕がなかった。

半年が過ぎ、ようやくプロジェクトが一段落して調べてみたら、良泉館は大赤字であることがわかった。しかも、泰三の社会的な信用が高かったため資金の貸し手は多く、借り入れがどんどん膨らんでいったようだ。負債は、部屋数わずか20室の旅館には不相応の10億円にも達していた。驚いたことに3歳の愛未まで相続人として借金を背負うことになっている。

のんびり構えていた希実もさすがに愕然とした。急いで相続放棄の手続きをしようとしたが、できるのは相続後3か月まで。期限はとっくに過ぎている。しかたなく旅館を売却して少しでも借金を減らそうとしたが、古びた温泉旅館に買い手はつかず、査定額はわずか1万円と話にならない。

「こうなったら、やるしかないわ」

元来、前向きな性格の希実は、意を決すると会社を辞め、良泉館を立て直すことにした。それを聞いた祐樹も、希実を支えるべく、会社を辞めた。
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