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第4章 移りゆく季節の中で～夏、悪い夢

希実の指図で全員が配置につく。祐樹は『源泉かけ流し良泉館』と入った半纏を着て、希実と一緒にバスの出迎えに玄関に立った。驚いたことに善一も同じ半纏を着て並んだ。

「どうしたんですか、それ？」

祐樹が聞くと、

「女将に借りたんですよ。決まってるじゃないですか。ねえ」

善一は、笑いながら希実の肩を馴れ馴れしく抱き、頬ずりしそうな距離まで顔を寄せた。

一度抱いた女はもう自分のものとでもいうような態度に祐樹はイラッとしたが、希実は軽く善一の手を払いのけ、上手に身をかわした。

「なんだかドキドキするね」

祐樹に身体を寄せてきた。

「そうだね」

祐樹も希実に身体を寄せて肩と肩をくっつける。そんな二人の姿を善一は面白くなさそうに見ていた。

間もなく『ホテル＆スパSANGA』と書かれたバスが到着した。お客さんが次々と降りてくる。

「いらっしゃいませ」

祐樹は、希実や善一と一緒にお辞儀をして迎えた。

希実は、にこやかな笑顔を浮かべて、次々とバスを降りてくる人たちに挨拶している。

その隣で善一も満面の笑顔を浮かべ、「よくお出でくださいました」「足元にお気を付けください」と一人ひとり丁寧に言葉をかけていた。祐樹は感心した。改めて経営者としての善一の優秀さがわかる。自分も見習わなければと思う。